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毎日新聞社会面に3段抜きで「小4 新種化石発見」の見出しで、大阪府阪南
市の小学校4年生の熊谷菜津美ちゃんが和歌山県湯浅町栖原の地層から、白亜
紀前期(約1億3000万年前)のものとみられる新種のエビの化石を発見し、
この子の名前にちなみ、学名が「ホプロパリア・ナツミアエ」と付けられたこ
とが報じられれた。
この記事を読んで、学生時代に長崎県の五島列島南南西約60kmに浮かぶ男女群
島へ調査に行った1964年当時の記憶がよみがえる。その男島で見かけない
小型のヘビに遭遇した。標本にして持ち帰り、は虫類図鑑で調べた。同種のヘ
ビは記述されていないと感じつつ、何の疑問もなしにその後の追求をしないで
いた。その2〜3年後、九州の大学が行った群島の学術調査で、「新種のヘビ
(1986年にダンジョヒバカリと命名される)発見」と大々的に報じられた。
その記事で、自分の力のなさにガッカリし、よくよく考え、ことの次第を自分
なりに納得するよりしょうがなかった。
いわゆる博物学における新種の発見は運だけではなしえない。私はクラブ活動
で当時それほど注目されていない無人島を探検し、新種のヘビに遭遇した。菜
津美ちゃんは博物館が企画した発掘イベントに参加。拾い上げた石にエビの化
石が含まれていた。ここまでは両者にそれほどの違いがない。その時点ではど
ちらも新種発見など夢にも考えていない。しかし、菜津美ちゃんは新種発見者
になり、私は笑談のネタにしかならなかった違いはこの先にある。
新品種を採取しても、それを証明しなければ新種にはならない。それには採取
品が既存のものと異なっていることを証明するための知識と研究手段が要求さ
れる。さらに研究結果を専門誌に発表しなければならない。発表は通常英語で
記述する。記述した論文の公開をもって新種が世間に認められる。
菜津美ちゃんの場合は、博物館学芸員の小原正顕が指導者としてバックで注意
を払っており、他の研究者も加えて専門家の立場からこの化石について精力的
に研究し、最終的に論文を発表した。その結果、菜津美ちゃんは新種の化石発
見者となった。一方、私の場合は、専門家にも相談せず、中途半端で投げ出し
た事が差に表れた。しかし「ダンジョヒバカリ」は発見後、論文発表までに2
0年余りの歳月が費やされている。おそらく、新種の証明が困難であったと想
像がつく。
この博物館では発掘イベントをたびたび開催しているようであるが、今年の5
月にも小学生による「白亜紀前期のネズミザメ類の歯の化石の発見」がマスコ
ミ報道されている。一般にこの種の研究は世間の注目を浴びない。専門家が自
ら採取し、新種と認定されても、よほどのものでない限り新聞等の報道で取り
上げられることはない。それが小学生などアマチュアが発見に関係し、そこに
ドラマがあれば多くのメディアが大きく取り上げる傾向がある。この博物館は
上手にそのような機会をとらえ、博物館の広報活動をしていることが伺える。
現在、博物館を含めた公設研究機関は本来の地道な研究成果よりも、マスコミ
への露出の程度で評価される傾向にあり、その対応で苦慮している機関も多く
ある。これは、公設研究機関のみならず、大学についても言える。このことが
本来の研究の阻害にならないことを願うのみである。
(男女群島は自然を維持する数少ない地域として全島が国指定の天然記念物と
なっている。今では、動物の捕獲や植物の採集はもとより、島への上陸も簡単
にはできない。もちろんダンジョヒバカリに出会うことは不可能である。)
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